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審査員スペシャルインタビューVo.05 〜浜野与志男先生〜

  • 6月14日
  • 読了時間: 6分

国内外の若いピアニストたちにとって、新たな挑戦の場となる「国際ソリストコンクール ピアノ部門」。  

今回が記念すべき第1回の開催です。


まだ始まったばかりのコンクールですが、  

私たちはここを、演奏する人と聴く人がまっすぐにつながる場所にしていきたいと考えています。


このコンクールが特別なのは、“聴く力”と“導く力”を兼ね備えた『審査員』の存在です。  

演奏技術だけでなく、その人がどんな音楽を奏でようとしているのか――  

そんなところまで丁寧に耳を傾けてくださる、心ある先生方が揃っています。


このインタビューシリーズでは、審査にあたる先生方の音楽への想いや日常、  

そして教育者としてのまなざしに触れながら、  

これから舞台に立とうとする皆さんに、「このコンクールで挑戦したい」と思っていただけるきっかけをお届けしていきます。


コンクールを「試される場」ではなく、

「自分の音楽を届ける場」として感じてもらえるように――  

そんな想いを込めて、お届けします。



国際ソリストコンクール ピアノ部門の審査員スペシャルインタビュー


ピアノの道に進みたいと思ったのは、何歳頃ですか?

その際、例えば学校(勉強・宿題など)とピアノの両⽴はどのようにされていましたか?


ピアノは小学4年生ごろからギアを上げて取り組んでいましたが、音楽高校への進学を家族で真剣に相談したのは中学に上がってからでした。そのあともまだギリギリ中学3年まで「パイロットになりたい」「建築家になりたい」などさまざまな葛藤がありましたが、自分の中でピアノが既定路線になっていたけれど、あまりにも過酷な道なので〈心の逃げ場〉として他の進路も選択肢として残していたのではないかと振り返っています。

中学は受験を経て入った進学校だったので、勉強との両立はとても大変で、深夜までの練習時間と睡眠時間を確保するために母が出勤途中に車で学校まで送ってくれたことがとても多かったです。校則ではもちろん厳禁だったのですが、そろそろ時効となっていますように...



オフの日は何をして過ごしますか?また長期の休みがあればどう過ごしたいですか?


実際のところ夏休みや春休みなど長期休みを除いてほとんどオフの日がなく、大学のレッスン・授業のない日にはホームレッスンをしたり、コンクールの審査に出向いたり、また月1回ほどのペースで演奏会が入ります。地域の自治会の活動にも参加しているので、そのミーティングもあり、週末に半日ほど空くときや平日に半休を取るときには自宅の庭でガーデニングをしています。ごく稀に日曜日が終日空くときには家族でゆっくり食事をとり、その時間が至福です。

長期休みには旅行がしたいとずっと思っていて、今年の夏にようやくイタリアの講習会に行く仕事と重ねて家族でドイツ・イタリアへ旅行をする予定です!



今まで数多くのコンクールに参加されたかと思います。

その中で思い出したくもないくらい「やらかしてしまった…」と言う黒歴史はありますか?


英国〜ドイツ〜ロシア留学中には毎年いくつかのコンクールを受けていて、予選落ちをしたコンクールは星の数ほどありますが、ひとつ、今からでもやり直せるものならばやり直したいものがあります!

2015年2月にロンドンから渡航して受けた、イタリア・トスカーナ州グロッセートでの「スクリャービン国際コンクール」。直前にドイツへ行っていたのですが、デュッセルドルフからローマまでの短いフライトにもかかわらず舞台衣装一式が入ったスーツケースがロストバゲージとなり困ってしまいました。コンクールではクジ運が良く、予選最終日に当たったにもかかわらず、その日までスーツケースが届くか心配で、出番まで中二日空くため、いっそのことローマからロンドンの下宿先へ弾丸で戻って別の衣装を持ってまたローマへ行こう...と思い立ち、弾丸でロンドン往復しました。

下宿先へ戻って少し練習はできて衣装も確保できたものの、移動の疲れが甚だしく、果たしてそんな気休めの練習に意味があったのだろうか、と。

旅好きが昂じて無茶なことをしてしまい、予選での演奏は全く印象に残らない「60点くらい」の出来。普段着でも構わないと割り切って、会場の街で穏やかに過ごした方がきっと良い演奏が出来たに違いないと、ほんとうに悔しく思っています。



舞台袖で手が冷えて指が動かなくなってしまったことはありますか。

どのように対処しましたか。

また、指が冷えないオススメの方法があれば教えてください!


私自身どうやら基礎体温が高いようで、覚えている限り、数年前までは本番直前に身体が冷えることはありませんでした。しかし年齢とともに体調が変わってきて、一昨年ごろに演奏前に違和感が出るようになりました。コンクール審査でお会いしたとある先生とのお話の中で、身体が冷えないように工夫されていると聞き、私も本番前に厚着をして身体の芯を冷やさないように心がけたところ、かなり出来が良かったのです。秋口や春先など、「まだ冷えないかな」「もう冷えないかな」と思いがちな季節には特に注意が必要で、厚着を心がけています。



本番前のルーティンはありますか。

(必ず〇〇を摂取するようにする・前日は何時間寝るようにする、など)


日々の生活の延長線上にいろいろなルーティンがありますが、とりわけ演奏に直結するようなものは特にありません。本番が近づくと指導の仕事との兼ね合いもあって、切羽詰まってくることが多いのですが、そのような中でも睡眠時間を確保するべく「奮闘」しています。頭が朦朧として何も手につかなくなる状態を「ブレイン・フォグ」と言うそうですが、睡眠を充分とるとこのブレイン・フォグがかなり軽減されて、メンタルも体調もずっと良くなると実感することが増えました。



練習のモチベーションが下がったときはどうしてますか?

(生徒さんへのご指導も含めて)


小学生の頃から大学時代まで度々聴いていただいたヴァディム・サハロフ先生(元・愛知県立芸術大学客員教授)が、当時小学生の私に「練習したくないときは練習しなくて良い、良い波が来たときには逃さずに乗れ。」とおっしゃいました。毎日のように母に言われて練習させられていた私には新鮮すぎるアドバイスでしたが、おそらくこれは「人に言われてやるような練習は価値がない」というところまで含めてのメッセージだったのでしょう。小学5年生の私は言うまでもなくそこまで汲み取れず「自分で決めて良いのか!」くらいにとらえていました。

生徒・学生にそこまでバッサリ斬り込むには相当な勇気が必要ですが、自分が主役となってレパートリーまで含めた計画を立てるように、自分が責任をもって練習プランを組み立てるように、とは引き続き伝えていきたいところです。



演奏時に心掛けていることはありますか?(生徒さんへの助言も含めて)


演奏の出来は、当日「まで」の積み重ねが全てで、本番でいくらアドレナリンが出たとしても急に大きく羽ばたくことはできません。日々の練習やレッスンでの演奏のときと変わりませんが、出来ることはとにかく音の伸びと響きをよく聴くこと、呼吸と身体の脱力にも集中することでしょうか。私たちは俳優があらゆる役柄を演じるかのように演奏するわけですが、身体的には舞台に上がっても等身大の自分なので、身体のコンディションには気を配らなくてはいけませんね。



インタビューご回答ありがとうございました。

浜野与志男先生のホームページやSNSもぜひチェックしてみてください。


▼公式ホームページ


▼公式Instagram

 
 
 

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